ラオスには草木染めが文化としてまだまだ残っています。草木染めとは天然染料を使って染色すること。環境に優しいと近年注目を浴びています。天然染料って何?どうやって染めるの?今回はそんな草木染めのあれこれをご紹介します。
草木染めとは?
草木染めとは、その名の通り草木、つまり植物で染色すること。草花や果実などが主な材料として使われます。化学染料や合成染料に対して植物など自然から採れるものを天然染料と呼び、それに伴って天然染色とも言われます。
草木染めの魅力
草木染めの魅力は、なんと言っても世界に一つだけの色が作り出せること。いくら同じ材料を同じ分量で、同じ工程で染めても、気候の影響やその植物、繊維のわずかな違いで全く同じ色を作り出すのはほぼ不可能です。さらに、年月が経つにつれて色が変わっていくものが多いです。色によって渋い色になったり淡い色になったりとさまざまですが、こうした経年変化を楽しめることも魅力の一つです。
草木染めの方法
草木で染めると言っても想像がつかない方も多いのではないでしょうか。
その方法をざっくり説明すると、
①植物を煮出す
②繊維(糸、布など)を浸ける
③すすぐ
たったこれだけです。工程自体はとっても簡単。
この基本のステップに、色落ちを防いだり発色を良くしたりするための媒染と呼ばれる工程が加わります。また、植物を煮出す時間や繊維を浸ける時間、媒染の種類、さらにそれらの回数を変えることによって色味やその濃淡を調整します。
どうして草木で染まるのか
実は草木染めは化学実験なんです。原子や分子の世界。専門的なお話になってしまうので触りだけ説明すると、植物の持つ「繊維にくっつきやすい」分子が、繊維の分子とくっついて色が付きます。植物によって色の出にくさが違ったり、繊維によって色の付きやすさが違ったりするのは、それぞれの物質が持つ分子が異なるからなんですね。逆に言うと、くっつきやすい分子同士が出会わないと染まらないということです。今でこそ染色に適した植物は書籍やインターネットで調べることが出来ますが、それがなかった時代にこんな運命的な発見をした先人の偉大さに感動しちゃいます。
ラオスの草木染め材料は家の庭から
自然豊かなラオス。そこら中に緑が生い茂っていて、近所の山や畑から草木染めの材料が潤沢に採れます。「身近で採れる材料を使った草木染め」というのがラオスの売りなのですが、村のお母さんたちは本当にその辺の庭から材料を採ってきます(笑)。もちろん、どの草木が適しているかを知った上でなんですけどね。でもそれは書籍やインターネットからの情報ではなく、おばあちゃんやお母さんから教えてもらった生の知識、さらには経験から材料を選んでいます。そしてその日の気分によってどの色を染めるのかを決めるんだとか。
ラオスの主な材料
草木染めの材料は植物の数だけあります。染めるための色素を持たないもの、あまり強い色を持たないものなどもあり、植物にも染色に向き不向きはあるのですが、いろんな植物を試してみるのも草木染めのおもしろさです。
ラオスで主に使われているのは、
・玉ねぎの皮
・ジャックフルーツの木
・マリーゴールドの花
・ラック虫
・藍
・ベニノキ
・黒檀の実 など
日本でもお馴染みのものもあれば東南アジアならではの材料も。同じ色を染めるのに国や地域で材料が違うというのもおもしろいですよね。各材料で出来る色やその工程については、今後じっくりご紹介していきますので楽しみにしていてください。
ラオス染色場
村で草木染めをするお母さんたちは、ほとんどが自分の家の庭で行っています。大きな鍋と薪さえあればそこが作業場です。染色をお仕事にしているお母さんたちも、家と庭を行ったり来たりしながら家事の一つのような感覚で草木染めをしています。染色は昔から生活の一部だったので、その習慣の名残りかもしれません。ラオスでは料理の際に薪で火を焚く家庭がまだまだ多く、染色も料理のようなものだと話すお母さんも。年中暑い国で外に出てぐつぐつ火を焚くなんて、なんてパワフル…といつも圧倒されてしまいます。いつか「各家庭の作業場訪問!」みたいな特集をやりたいなぁ、なんて思っています。
今回は草木染めの基本的な部分とラオスの草木染めについてご紹介しました。自然の中で生活に溶け込むラオスの草木染めが伝わったでしょうか。今後草木染めの各材料や実際に染めている様子についてもお届けしていきます。