ラオス織り物の旅〜北部編〜ウドムサイ


みなさん、こんにちは。気付けば2022年も残すところ2週間を切りましたね。年末年始のご予定はいかがですか。今年は久々の海外旅行、国内旅行、帰省など、わくわくする予定を立てている方も多いのではないでしょうか。私は日本で暮らしていた頃は毎年実家で家族とぐーたら過ごしていました。初日の出すら見に行かない家族でしたが、こたつでの年越しが懐かしいこの頃です。

 

さて、今回のMAGAZINEはラオス織り物放浪記、北部編をお届けします。以前に南部の織り物の旅を綴ってきましたが、南部とはひと味違う北部の旅をお楽しみください。

 

自然たっぷりウドムサイ

ラオス北部に位置するウドムサイ県。世界遺産の街ルアンパバーンのすぐ北にあり、豊かな自然と素敵なハンディクラフトが魅力の街です。世界遺産の影に隠れてしまいがちですが、実は観光客にも人気の隠れスポットなのです。「ラオス全県行ったけどウドムサイが一番好き」と言う友人がおり、ウドムサイにどんな魅力があるのかずっと気になっていました。以前はすぐ隣のルアンパバーンからでも陸路で8時間はかかっていましたが、今は鉄道も通りとても行きやすくなりました。ビエンチャンから約3時間、ルアンパバーンからは1時間弱でウドムサイの県都ムアンサイに到着します。

鉄道からの景色

駅に着くと街中へは乗り合いの電動トゥクトゥクで移動します。とても先進的!

 

ウドムサイは中国に県境が接しているため、中国との物流が盛んです。そのためとても美味しい中華料理屋さんが多いとの噂も(残念ながら今回はコロナの影響で休業しているところが多いようでした)。中心街はとてもコンパクトで、でも道路が広く(道路のコンディションはラオスでは非常に重要)、思っていた以上に便利そう。なんと、ラオスでは珍しく街中に信号機もありました。

街中の様子

それでは早速、織り物を探す旅へと出かけましょう。

 

葛(くず)の村

中心地から車で2時間ほど行った場所に葛の素材とその手工芸品を生産している村がありました。葛という素材をご存知でしょうか。以前Instagramでも紹介しましたが、葛はマメ科クズ属のつる性の多年草。日本にも自生していて、根っこは葛粉や漢方薬(有名な葛根湯など)に使われます。織り物ではないのですが、葛の素材を使ったハンディクラフトがとても珍しく、ラオスではこの地域が葛の生産地として有名なのでぜひ紹介させてください。

この村では葛から取れる繊維を編んで鞄やポーチなどの雑貨を作り、観光客向けに販売しています。葛はもともと農家さんが農作物や石などを運ぶのに使っていました。それほど丈夫な素材なんですね。葛の植物から取れる繊維を撚って糸状にして使います。

葛の繊維(左)と糸状になったもの(右)

今回はちょうど葛を編んで鞄を作っている様子を見ることができました。とても硬い素材なので編むのが難しいのですが、まるで毛糸でも編んでいるかのようにお喋りをしながらするすると編んでいきます。実はこの糸状になっているものは葛からそのまま取れるわけではないんです。さまざまな工程を経て葛の繊維を糸にしています。次の機会に詳しく葛の収穫から編み終わりまでをご紹介しますね。

 

タイルー族の織り物

ウドムサイはタイルー族が多く暮らす街。タイルー族は織り物が得意な民族としてとても有名で、そのコットンやシルクの織り物は大変美しいと国内外で評判です。北部のルアンパバーン、ウドムサイ周辺に多く暮らし、各地で「タイルー族の村」として有名な村となっています。今回はその中の一つの村にお邪魔してきました。村の織り子さんたちが一箇所に集まって織り物をする家があります。この場所で毎日お喋りをしながら織りをして、みんなでお昼ご飯を食べて、おやつを食べて、一日のほとんどの時間をこの場所で過ごしています。会社や団体として成り立っているわけでも、勤務時間が決まっているわけでもありません。ラオス人は単独行動が苦手な人が多く、一人だと寂しいからと、数人で集まってお仕事をする人が多いんですよ。

計8台の織り機が並ぶ家の庭のようなスペース

とても鮮やかな色を使ったこの村の織り物。象が並んだ柄は村に伝わる伝統的なものです。ウドムサイ中心部のマーケットに送って販売しています。

 

藍染め

ラオスの各地域で有名な藍染め。藍染めをする多くの家では自分たちで藍の葉を育てて藍を建てている人も多く、時間をかけて染められた糸は美しいの一言に尽きます。ウドムサイの村でも藍染めをしているお宅にお邪魔しました。一見普通の伝統的な家屋ですが、高床式住居の1階部分に藍甕が並んでいます。一歩踏み入れた瞬間にどこか懐かしさを感じる藍の匂いが漂ってきます。壁があるわけではないのに、確かにここに藍の空間ができているのがとても趣深いものでした。

1階は藍染めの空間

お手製の藍甕

 

お手製の藍で染めた糸はとても美しい仕上がりです。ここでは織り方や染め方を変えることでさまざまな種類の生地が作られており、藍染め以外の草木染めも行っています。

先染めした綿糸と織り上がった生地

 

ワッフル状の織り物

織っている途中の作品も見せていただきました。ラオスでは珍しいワッフル生地。日本では蜂巣織り(はちすおり)とも呼ばれます。ラオスの綿を使ったワッフル生地は、触り心地が最高です。しかもこの織り、なんと以前に日本人から織り方を教わったそうです。もしも機会があればいつかお会いしてみたいなぁと思っております。(あわよくば私も教わりたい…!)

 

バラエティ豊かなウドムサイのハンディクラフト、いかがでしたか。今回は大きなウドムサイの中のほんの一部の地域を訪ねました。まだまだ知らないハンディクラフトがたくさんありそうな予感です。

実はウドムサイのハンディクラフトには何年も前から日本の支援が入っていて、製品開発やマーケティングにはこれまで多くの専門家やボランティアが携わっています。そのため村で作られる製品一つを取っても、きちんとデザインができあがっていて、場所によっては販路も確保されています。こんなにも根付いているなんて素晴らしいですよね。いつか最初に支援に入った方にその当時のお話を伺ってみたいものです。そしてまだまだウドムサイのハンディクラフトをめぐる旅は続きます。次回をお楽しみに!