ふらっと立ち寄った綿の村のお話


みなさん街歩きはお好きですか?私はラオスでふらりと村に立ち寄る「村歩き」が趣味の一つなのですが、今日はとある村に立ち寄ったプチ旅のお話です。先日Instagramでもご紹介した綿の村なので、投稿を見ていただいた方はその裏話としてお楽しみください。

 

ラオスの村

ラオスでは市街地から離れると道路沿いに村がぽつり、ぽつりと立地していて「ここが一つの村なんだな」と、日本の市区町村と比べるとその境界線がわかりやすいことが多いです。村には昔からの伝統的な住居が見られたり、小さな市場や学校、お寺、村人の生活が見られたりと、ラオスの生活をより深く知れる気がしてとても面白いのです。立ち寄った村では必ずすれ違う人に挨拶をしながら歩くようにしています。小さな村に突如現れる外国人、観光地でもないのにあきらかに不審者ですからね(笑)。挨拶をしたときの反応は、笑顔で挨拶を返してくれる人、「何してるのー?」と声をかけてくれる人、とても不思議な顔で無言で見つめてくる人、と人それぞれです。

 

綿の村との素敵な出会い

この日立ち寄った村では、村のお母さんが軒下でふわふわ綿を手にしていました。綿のゴミ取りをしているところです。もしやと思いお話を聞いてみると、ここでは綿を育てるところから糸を紡ぐところまで全部自分たちでしているのだそう。そのような村はラオスでも最近少なくなってきているのでとても貴重な村の一つです。綿を育てている(=綿が育つ)地域はある程度エリアが決まっているのですが、こんなところにもあったなんてと偶然の素敵な出会いでした。

するともう一人糸を紡いでいるお母さんがいるとのことで、そちらのお宅に連れて行ってもらうことに。歩いてすぐのところに綿が置いてあるお宅がありました。先ほどのお母さんのご姉妹なんだそう。綿の収穫はとっくに終わっているのですが、ゆっくりゆっくり作業しているのでまだ糸にしていない綿がこんなにたくさんあるのよと、綿打ちから糸紡ぎまで一連の流れを見せてくれました。その作業の速さは圧巻です。

こちらのお母さんはこの村に19歳で嫁いでから約50年間ずっと綿の糸紡ぎをしてきたそうです。さすがベテラン、速いはずです。その当時は仕事が好きも嫌いもこの仕事をするしか他になかったけれど、今は生活の一部になっていると笑顔で話してくれました。

ここで紡がれている綿は主にストールに織られ、以前は観光客向けのお土産として販売していました。一方でラオスでは綿は織り物になるだけではありません。実は地元のラオス人には綿糸の方が需要が高く、それは「バーシー」と呼ばれるラオスの伝統儀式で使われます。バーシーについては以前こちらの読み物でも少しご紹介していますが、結婚式を始め門出や新築のお祝い、または何か不幸が起きたときにお清めのような意味合いで行われるラオスの伝統的で神聖な儀式です。そのため、多くのラオス人はその糸にもこだわります。地元で穫れる手紡ぎ綿は人気なんだそうですよ。

 

植えたばかりの可愛い綿

最後に植えたばかりの綿の苗も見せてもらいました。まだまだ可愛らしいですね。また花が咲いた頃に、綿が見えてくる頃に、頻繁にお邪魔してのぞいてみようと思います。

 

村の少子高齢化と伝統工芸

この村では現在糸を紡いで織り物をしている女性はこのお二人しかいません。ラオスの郊外の村ではある一定の年齢になると村を出て街へ行かざるを得なくなります。それは村の学校が小学校までしかなかったり、収入を得られる働き口がなかったりといった理由が大きく、若い世代を中心に家族で街に引っ越す人も増えています。そのため村にはお年寄りしか残らず、その村での綿作りや織り物など昔から伝わるいわゆる伝統工芸のお仕事は高齢化が進んでいるのです。日本も世界の国も同じ現状ですよね。

 

歩いているとちょうど小学校から下校する子どもたちがいました(トップ写真がその様子です)。小学生が全校生徒7人。この子たちが大きくなる頃にもこの村に綿や織り物が残っていてほしいなと願うばかりです。この村のお母さんたちが作る綿で一緒に何か出来ないかなぁと試行錯誤しています。